擦過。

土曜昼、しみったれた気持ちのまま
一度も入ったことない、やってるのだかやってないのだか
わからない地元そば屋に入る。
客、俺ともう一人のみ。
80は余裕で回っていそうな爺さんの店主。
おニイちゃん、スポーツ新聞読む?と
薦められるがまま、ドーモ、と貰い、
競馬の記事など興味のあるふりして、読む。
駅前のショッピングモールに客が流れて
しょーがねえや、という話(もう一人は商店街の人間らしい)
を横に聞きながら、とろろ蕎麦を啜った。


DC9Vのアダプターは、同じ日に秋葉原のガード下の
ジャンク屋で購入した。
俺はあまりこういうところ行き付けておらず、
探しても見つからないので、店主と思しき男を捜す。
顔面全体に迫力のある皺が刻まれた、
究極に無愛想なオヤジ。
DC9Vのセンターマイナスってありますか、と尋ねると
ごにょごにょっと言うので、
え?ないんですか、と問うと
唐突にドスの効いた声で「容量!!」と凄まれ、
一瞬気が動転。
「あ、200mAあれば十分なんで」
「400しかないな」
「あ、400でいいっす、スイマセン」
「500円」
「あ、ドーモ。スイマセン」
と、何か理不尽に謝り倒してアダプターを入手したのだ。


TPOだとか空気だとかを超越しているオヤジ共に
緩やかに翻弄され、己のツマラン自意識を
一蹴される思いがした。