2014年9月那須湯本・宇都宮旅行記2日目。

2014年9月20日(土)
 6時起床。身体がだるく、やばいなと思う。喉がやや腫れており、少し熱があるようだった。去年の北温泉といい、今年の春に行った湯宿温泉の時といい、なぜか温泉一泊旅行でこのパターンが多い。布団は念のため重ねて掛けたのだが、身体が冷えており、とにかく温泉に浸かり体温を上げようと思った。
 6時15分5回目入湯。朝のいい時間というのに、誰一人会わなかった。地元の人の多くは坂の下の共同浴場を使うのかもしれなかった。
 とにかく回復した気になって、部屋に戻り、布団にくたばる。朝食は恐らく7時頃であろう。やはり素泊まりにすべきだったかなと思う。
 7時過ぎに呼ばれ、朝食。

 食べ始めると意外と食欲はあるのが救いであった。温泉卵、焼き魚、焼売、納豆、漬け物などおかずはひと通り完食する。四人組はニッカズボンを履いた作業着姿で、やはり近くで現場があるのだと思った。
 予定では10時1分のバスで湯本を発とうと思っているのでまだ時間がある。8時にだめ押しの入湯(6回目)をして部屋に戻り、9時過ぎまで眠り体力回復を図った。体調はだいぶマシになったように思えた。
 9時半過ぎ、6800円也払い、チェックアウト。宿の廊下に誰かの詩が書いてあり、「松葉はまほろば 滝の湯ありて 心身やすらぐ」といったような内容だった。贅沢の基準は人それぞれだが、立地を考えると確かにここは素晴らしい環境だと思う。
 バス停のベンチで待つ。10時1分、時間通りバスが来て、黒磯に向かう。820円。
 10時35分黒磯着。一服して、すぐJRの乗り場に向かうと既に電車は来ており、10時50分黒磯発。車内はさほど混んではいなかった。半分くらい寝ていた。
 11時41分宇都宮着。初めて降りたが、駅前は仙台のようなものだと思った。高崎にも似ている。大体没個性だ。
 餃子に食指の動かない俺は、食べログで事前に調べていた獅子王というトンカツ屋さんに向かった。精肉店が営業している店で、味と値段の安さが高評価だった。西口を出て右へ向かい、125号線と64号線の交差点の角にある。「食べログ評判の店」の掲示がしてあった。ここは材料が切れると店を閉めてしまうため、正午前に着くのがベターと書いてあったので急いだ。
 カウンターに座り、ロースカツ定食とミックスフライ定食で迷った末、ロースカツにする(どちらも650円)。実録系の任侠マンガがあったので興味のある振りをして読む。

 ロースカツ定、はっきり言って感動的な味とCPだった。東京でこの内容で店を出したら殺到するだろうと思う。キャベツも甘くて美味しい。また宇都宮で食べる機会があったら来ようと思う。
 食べ終わると既に12時20分頃で、12時35分のバスで大谷石資料館に向かう予定なので軽く焦る。小走りで駅に引き返す。バスは間もなく来るタイミングのようで、無駄がなかった。
 定刻に大谷・立岩行きバス発車。何となく流れる車窓を見る。普通、この手のターミナル駅は駅前だけ栄えているという印象が強いが、宇都宮は範囲が広いというか、どこまで行っても開けている感じだった。どこへ向かう車なのか、道は割合混雑していた。
 乗客の多くは大谷観音前で降りたが、俺の降りたのはその次の「資料館入口」である。450円也。豆腐を切り出したような大谷石の断崖が既に迫力で、非現実的だ。

 資料館はまだ目の前でなく、徒歩で5分くらいの距離があった。やがて自然の奇妙な造形の入り口が見えてくる。吹き込んでくる風が心なしか既に冷たい。それは地下坑内に続いている穴で、その前が休憩スペースになっているようだった。資料館の入り口はその脇にあった。
 入場料700円也を支払い、いざ地下坑内へ。階段を降り始めると、既に空気が冷たい(12度)。風邪気味の今、決して有り難いものではなく、持参したカーディガンを羽織る。階段を降りると一気に開ける地下大空間。

 予備知識なしに行ったら大ショックのはずだが、髭虫氏に「RPGのラストダンジョン」というイメージを既に植え付けられていたので、ああ確かにその通りだなと思った。ひんやりとして湿った空気も含めて、ダンジョン感がとても強かった。天井が高くてスケールがでかい感じがいい。

 ところどころライティングされていて雰囲気満点、温度も低いのでカップルの密着度も高く、見方を変えるとセックスの前菜的スポットでもある。反面、野郎一人で来ている者は一眼レフと一脚など携えており(確かに極めてフォトジェニックな場所なのだが)、色気とはだいぶ無縁だ。

 謎のオブジェというか用途不明の遺跡チックな代物が散見されるのが「アクアノートの休日」チックでよいと思った。こういう「探索する楽しさ」がもっとあると嬉しい。
 この空間はコンサートなどでも使われる場合があるそうで、むしろそういう時に来てみたいと思った。段々寒くなってきたので地上に戻り、手作業で石を切り出していた頃の展示など見る。大谷石は耐火性に優れるが水に弱いという特徴を学ぶ。
 見るべきものも見たのでバスの時間を見ると、バスはちょうど行ってしまったところで、次の時間までに40分くらいあるのでうんざりした。
 併設のミュージアムショップなど冷やかすも、全然時間潰れず、とりあえずバス停まで徒歩で引き返す。芝生の上のベンチに座りぼーっとしつつ、先ほど一つ手前の大谷観音のバス停で大勢降車したことを思い出した。折角なので大谷観音も見てみることにする。
 バス停一つ隔てただけなのでほどなく到着。

 大谷観音の前は資料館よりも観光客で賑わっていた。最古の石仏、千手観音が鎮座しているらしい。この機を逃すともう来ないと思ったので、拝観料300円也を支払い、中に入る。

 外から奇形の岩の写真など撮っていると、お坊さんが「そろそろ説明が始まりますので、中にお入り下さい」と呼ぶ。
 中に入ると全長4mの岸壁にそのまま彫られた千手観音像。何というか格好いい観音様だった。先ほどのお坊さんがそのまま解説する。800年前につくられた観音像。弘法大師の作と言われており、シルクロードで見られる石仏と手法が同じ。千本ある手には掌に目があり、人々の行いを常に見守っている。手にロープが繋がっており、その先端に付いた布を触ると、観音様と握手したことになるのだそうで、握手するつもりで布を握った。
 その奥にも岸壁に彫られた石仏があり、こちらはアナウンスで説明があった。かつては極彩色であったという。色が付いていなくても迫力がある。曲面に彫られており、上側を肉厚にして遠近感を演出しているのがモダンであった。
 仏像の拝観はこれで終了。境内の庭園や、宝物殿を見て回る。宝物殿では、近くで採掘されたと思しき11000年前の人骨が展示されていた。20歳前後の縄文人の骨であるという。
 その後、戦後に建造されたという平和観音像を見に行く。

 全長30mぐらいであろうか、迫力があり慈悲深い表情の観音像だった。既に足が疲れていたが、観音像の頭の高さまで上れる階段があったので根性で上る。
 見るべきものも見たので気が済み、退散。バスの時間を見ていなかったので不安だったが、「大谷観音前」バス停に着くとちょうどバスが来て、とても運がよかった(これを逃すと次は1時間後だった)。
 15時43分大谷観音前発。行きと違い道は空いており軽快に進む。帰りはJR宇都宮から帰るつもりでいたが、試しに調べると東武宇都宮駅から東武線で帰ったほうが遙かに安かった(JR宇都宮〜上野1940円、東武宇都宮〜北千住1200円)。しかも時間はほとんど変わらぬので、東武から帰ることにした。
 16時4分東武駅前着。折角なので駅前のアーケードなどふらふらする。

 やはり仙台などと大差ないような感じ。折角なのでだめ押しで餃子を食べて宇都宮を楽しもうと思ったが、下調べをしていないのでどこの餃子がいいのか分からない。
 仕方ないので東武の駅前の「健太餃子」というところに入る。慣れた様子を装い、健太餃子一皿300円也とグラスビール460円也を頼む。餃子は注文から焼き上がりに8〜10分掛かるので、うっかりビールを干してしまわぬようにセーブする。

 餃子、なかなかに美味ではあるが、やはり東京で食べても大差ないように思えた。そしてビールで刺激された食欲に餃子一皿の若干の物足りなさ。しかしこのストイックさが宇都宮っ子の心意気と勝手な解釈をして、お勘定して出る。
 ほろ酔いで体調もいい具合によく分からなくなり、17時5分東武宇都宮線新栃木行に乗車。忘備録など漠然と書く。
 17時41分新栃木着、東武日光線区間快速浅草行に乗り換える。そこからはララージのAmbient3を聴きつつひたすら眠った。18時52分北千住着。駅構内のカレー名店会で牛すじカレー650円也。北千住からは徒歩で帰った。旅から戻ると日常に慣らすために無駄に歩きたくなる。