『恋の門』感想。

そういえば、観てきたんだよ。
うーん、ダメ。原作のファンとしては認められない。
松尾カラーが強く出たことには、それで別にいいと思う。
原作を素材にして全然別物に作り変えちゃうというのは、
思い入れを排除する意味でとてもオトナなことだし。
最後で泣けなくても、後半のミュージカルシーンとかも
アリだと思うんだよ。
ただ脚本でこれはダメかなーと思うところが幾つかある。


一番大きいのが、人物が破綻しちゃってて
感情移入しようがないって点。
恋愛に打算が入る微妙な心理描写が原作のよさだったからね。
特に恋乃のキャラクターがもう全然ダメだった。
なんで佐良が一番まともなやつになってるんだ??っていう。


あと原作では門と恋乃がシンメトリーになっているのが
重要だったと思うんだよ。
片や芸術家気取り、片やオタクのコスプレ女、
どっちもどっちっていう。
原作はお互いの言い分と弱みを両方描ききってるから、
男根主義にもフェミニズムにもならずとても公平に
恋愛を描けていた。
ところが映画では恋乃が全然地に足のついていない
キャラになったからそのバランスが破綻した。
これは致命的だったと思う。


原作と切り離して客観的になってみても、
うーん…どうなんだろう。
ノンストップな笑いだったら『けものがれ、俺らの猿と
とかの方が俺はすんなり入ったからなー。
松尾スズキのファンは楽しめるのかもしれないが、
正直ちょっと、自分のファンに甘えているような節を
感じますね。
松尾さんのファンは、彼が気絶してぶっ倒れただけで
笑うかもしれないけど、俺おかしくないもん。
そういうスノッブなところがいまいち好きになれない。


あとはせいぜい、異様なキャスティングに笑う位か。
庵野秀明*1安野モヨコ夫妻を初め、
漫画家だけでも内田春菊羽生生純本人、山本直樹
さらに忌野清志郎、果ては市川染五郎まで、他にも
知る人ぞ知る著名人が多数参加。
まあ、そんだけと言えばそんだけです。


心配していた松田龍平の演技は案外ちゃんとしていて
ストレスなく観れただけに残念だった。
ただ、これを機に原作が読まれるようになるなら
それは嬉しいけども。

*1:茶の味』然り、この人最近やたら映画に出てくる。ちなみに劇中アニメも安野秀明は演出とメカニックデザインで参加