『シルヴィア』[sylvia]

juriano2005-01-03

久々に劇場で観てきました@銀座シネスイッチ
31歳で夭折し、若い女性を中心に神格化される向きもある
米女流詩人、シルヴィア・プラスの半生を描いた映画。
不勉強ながら作品はまだ読んだことがないけど。


物語はシルヴィアの英国留学時代から始まる。
詩がなかなか認められない中、シルヴィアは同じく詩人である
テッド・ヒューズと恋に落ち、自分の詩作もそっちのけで
テッドの作品をタイプし、出版社に送りつづける。
やがてテッドは成功を収め、二人は結婚しひと時の幸せを築く。
精神的に満たされたシルヴィアはテーマを失い、
スランプに陥る。
そんな中、テッドの浮気が度々浮上し、激しい夫婦喧嘩と
何度かの転居を経て、最終的に二人は別離してしまう。
別離をきっかけにシルヴィアは堰を切ったように創作を始め、
幼い子供たちを抱え、絶望に陥りながら詩を書き続ける…。


妻として、母として、そして詩人としての生き方。
そのすべてに真剣に目を見開き、本当の幸せを模索していく彼女の姿は
痛ましくも清々しく、生き様のひとつの理想形を思わせる。
己れの魂を焼き尽くす生き様。
そう、詩人は、芸術はこうでなければ嘘なのだろう。
神格化されるというのも納得がいく。


ただ、俺がこの映画を観て一番いいなと思うのは、全編に渡って
リアリスティックな視線が貫かれていること。
無駄な装飾も倫理性もない、教訓じみたところがないどころか、
哀しいまでに冷たい視線で、ありのままが描かれていく。
安易な意図に縛られる作品が多い昨今、こういう筆致はとても
グッときてしまう。


リアリズムは結果的に、芸術に殉じた天才詩人の生き方を絵空事
片付けさせず、観客自身の生き方に被さって考えさせる効果を
生んでいると思う。
女性の社会進出が進む昨今、勤め人として、妻として、母としての
役割を担わざるを得なくなった現代女性にこそ、シルヴィアの生涯は
ひりひりと迫ってくるものではないだろうか。
当然、現状に甘んじず真剣に生きていかなければならないことは、
性別や環境を問わず、万人に求められることなのだから、
男性も充分に見応えがあるはず。