森山新宿荒木展@初台オペラシティアートギャラリー

juriano2005-02-28

実は、最近モノクローム写真の凄さを今さらながら気づき、
これだ!とばかり図書館で手に入る写真集や、関連書を
結構読み、また自分でもモノクロ写真をやってみようと
画策中なのだった(現像を大変にやってみたい)。
うちの家系は幸い、死んじゃった爺さんや叔父さんも含め
写真好きが多く、機材を借りるには事欠かない。
ミノルタのAF一眼レフの出始めの頃の古い機種を
借りて、今バシャバシャ撮っている。


で、森山新宿荒木展だ。
森山大道荒木経惟が新宿をモチーフに撮ったコラボ展。
実はモノクロに魅入られたきっかけは安井仲治という人
だったのだが森山大道はそのフォロワーでもある。
だからやっぱり森山の写真も素敵だ。


実は写真展の類は今回初めて行ったのだが、なんと
たかが写真ごときがこんなおもろいとは。
モノクロームは無駄な色情報がなくなるから、より
対象の本質が透かして見える。
そこから浮き出てくるのは撮り手の情念だ、やはり
この情念の部分がモノクロ最大の魅力だと思う。
そして、その点で二人はずばぬけている。


プロの作品展を初めて見たが、素晴らしいと思ったのが
二人ともなんとも素人臭い写真ばかり撮ることだ。
俺も写真の世界を少し垣間見ているところだから、
絞り・露光・レンズ・フィルター・現像その他を駆使して
大変表現の幅が広いということは理解している。
しかし、二人の写真はその点において全然凝っていない。
どれもこれもスナップショットばかり。
しかし、それゆえに写真の上に収められているのは
大変に新鮮な、真空パックされた情念だ。


その情念というのも、なんともエロイものが多い。
ジーンズをモチーフにした写真のエロイこと。
逆に、ヌードをモチーフにした写真のほうはあまり
エロくなく、むしろ人間の滑稽味を感じさせるものが
多かったりして、面白い。


そう、さらに素敵と思ったのが、これだけの点数を揃えると
やはり二人の思想というか、世界観のようなものがちゃんと
浮き出てきてしまうこと。
写真に収められた人間の、なんとも滑稽な表情の多いこと。
中盤は、もうヘンな表情のやつを見つけては笑ってばかりいた。
そこには、人間に対する、若干諦念混じりの暖かさのような
ものが溢れていたと思う。
公園の昼食も、日向があればそこだけに集まってしまう。
そんな安易なアイデンティティで生きているもの。
だから人間は魅力的だ。
そういう価値観があるから、エロも段々爽やかに見えてくる。


3Fでは、二人が新宿を撮る様子を追ったドキュメントが
上映されていた。
それを見てもびっくりしたが、被写体を見つけてから
撮影するまでが、早い早い。
でも良い写真を撮るには、やっぱりこうだというのは分かる。
でもそれを実行するには、常に自分が一体何に興味があるのか、
自分は何を撮りたいのかに目を見開いて、それを抵抗なく
受け入れる、実行する、ということ(それは、一見簡単なようで
とても難しく、またコワイことだと思う)を続けていないと
ダメだと思う。
つまりは、自分の抑圧された無意識に目を見開くということ、
面白いけど、やっぱり写真も文学も根は一つだと知った。


個人的には何とも贅沢極まる展覧会だった。
見終わった後、かなり勇気が出た。
機会があらば、もう一回くらい行っておきたい。