早川義夫氏「読書日記」より。

5/12,19,26の日経新聞夕刊「読書日記」に早川義夫氏の書評コラムが
連載していて、昨日で終了!
実に素晴らしい文章を引用されていたので
記しておきたい。

第一回は「CD小林秀雄講演」。


第二回は青山二郎「鎌倉文士骨董奇譚」。
文学部のゼミで知っていたから嬉しい。ぜひこの機会に読んでみたい。
「優れた画家が、美を描いた事はない。優れた詩人が、美を歌ったことはない。それは描くものではなく、歌い得るものでもない。美とは、それを観た者の発見である。創作である」
青山二郎「鎌倉文士骨董奇譚」)


昨日の第三回は、車谷長吉銭金について」。
「私は自尊心が強い人間である。虚栄心の強い人間である。劣等感の深い人間である」
「人間の本質は悪であって、その悪を書くのが文学の主題である」
「小説一篇を書くことは、人一人を殺すぐらいの気力がいる」
車谷長吉銭金について」)


早川氏は「書くことは恐ろしい。僕も音楽でその境地にたどりつきたい」と記している。
共感!!


つまり「歌うことは怖ろしい」。
「怖ろしさ」というキーワードには引っ掛かるものがある。
美しいものは、同時に怖ろしいものではないか。
それはこちらの内面を透かし見て、存在意義を危うくするものであって、
表現とはかくあるべきだと僕も思う。


僕は一時期写真にはまっていたけど、
僕のなかで美しい写真とは、まさに怖ろしいものだ。
そして写真を撮るという行為は、自分の中で抑えている欲望に
ぎりぎりの線まで近づくことだ。
それはつまり、人間の本質である「悪」を書くということだったんだ、
と気がつかされた。
それを「善」で包んでしまうと、「嘘」が滲み出る。