吉野寿『天沼メガネ節』。

juriano2013-02-12

eastern youth吉野寿氏が6年にわたって綴った
ブログ「天沼メガネ節」の書籍化。
いま、まさに自分に必要な本だった。
このタイミングで出会えた幸運に感謝。


ライブで燃え尽きて虚脱しては酒を呑み、
エアコンの効いてない自室で汗にまみれて
宅録しては、壁にぶちあたり、打ちひしがれ…。
そんな日々の一切が、淡々と、時に厭世的に、
時にピースフルに語られていく。
それが6年分だから、物理的にもかなりの厚みだ。
なにしろ分厚いのがイイ。


捻り出された一語一語に、
語られない文脈に潜む、行き場のない情念に
どうしようもなく胸をえぐられる。
ある日の内容では、朝から録音作業をした挙句、
納得いかず全部消去したというのがあって、
それだけのことではあるんだけど、
はっとさせられずにいられない。
淡々と綴られていくその内容が、
ある瞬間フイに、無性に泣けてくるのだ。


これほどの人が、こんなにも孤軍奮闘して、
泥まみれになって戦っている。
それも、傍から見れば極めて地味で、
その戦い自体の意味を日々疑う必要のある格闘だ。
こんな人が存在してくれているだけで
ムチャクチャに勇気づけられる。


他人のことでクヨクヨ悩むのはやめよう。
己の敵は己しかいない。
何よりも自分に負けてはいけない。
どんなに決定的な一言よりも雄弁に、
吉野氏の生き様はそれを体現している。
この本が手元にあれば当面頑張れそうだ。