中島岳志「秋葉原事件 加藤智大の軌跡」。

juriano2013-07-22

中島岳志秋葉原事件 加藤智大の軌跡」
文庫化していたので買い、通読。
秋葉原の無差別殺傷事件は僕もニアミスしており、
勤務地は秋葉原なので毎日通っていますし、
実は事件当日も、事件の起きた数時間後に
偶然現場を通過してしまった。
なんで地面濡れてるんだ?と思った足元は
血を洗い流した後であって、鼻をつく鉄くさい匂いが立ち込め、
とてもヤバイことが起きた気配が濃く残っていた。


で、この本は犯人である加藤智大の人生を
寄り添うように追い掛けたもの。
母親から受けた虐待、歪められた自尊心、
現実社会での建前の関係、
インターネット掲示板に求めた本音の関係、
その書き込みのディテールまで漏らさず、
丁寧に「凶行に至るまでのリアリティ」を描き出している。


犯人は枠外にいる人間ではなく、
我々の日常と地続きであることがよくわかる。
特に意思疎通の面で自分も
犯人とかなり近い弱さを持っていると感じた。
不満を言葉で言い表さず態度や行動で示したり、
歪んだ自己承認欲求を持て余している点など、
とてもよく似ている。
ちょっとしたボタンの掛け違えで、
そちら側の人間になる危うさは十分にある。
ので、とてもオソロシク読んだ。
無論、罪のない人を無差別に襲った凶行自体に
同情の余地はないけれど。
対岸の火事では済まない。