中島岳志「秋葉原事件 加藤智大の軌跡」。
中島岳志「秋葉原事件 加藤智大の軌跡」
文庫化していたので買い、通読。
秋葉原の無差別殺傷事件は僕もニアミスしており、
勤務地は秋葉原なので毎日通っていますし、
実は事件当日も、事件の起きた数時間後に
偶然現場を通過してしまった。
なんで地面濡れてるんだ?と思った足元は
血を洗い流した後であって、鼻をつく鉄くさい匂いが立ち込め、
とてもヤバイことが起きた気配が濃く残っていた。
で、この本は犯人である加藤智大の人生を
寄り添うように追い掛けたもの。
母親から受けた虐待、歪められた自尊心、
現実社会での建前の関係、
インターネット掲示板に求めた本音の関係、
その書き込みのディテールまで漏らさず、
丁寧に「凶行に至るまでのリアリティ」を描き出している。
犯人は枠外にいる人間ではなく、
我々の日常と地続きであることがよくわかる。
特に意思疎通の面で自分も
犯人とかなり近い弱さを持っていると感じた。
不満を言葉で言い表さず態度や行動で示したり、
歪んだ自己承認欲求を持て余している点など、
とてもよく似ている。
ちょっとしたボタンの掛け違えで、
そちら側の人間になる危うさは十分にある。
ので、とてもオソロシク読んだ。
無論、罪のない人を無差別に襲った凶行自体に
同情の余地はないけれど。
対岸の火事では済まない。