日記。

「月と6ペンス」読み終わってしまった。
もうちょっとじっくり読めば良かった。
ストリックランドという架空の画家が
(モデルは一応ゴーギャン
追い求めた聖俗を超越した美的なるもの。
その描写にただただ痺れる。


〔理解できず、分析もできない感情が体中に満ちてきた。畏れと喜び−−天地創造の場に立ち会った者の畏れと喜びか。官能的で、情熱的で、途方もない……だが、同時に、身の毛のよだつ何か、人を恐怖のどん底に叩き込む何かがある。これを描いたのは誰だ。自然がひた隠しに隠していた深みにまで潜り込み、そこに守られていた美しくも残忍な秘密を掘り出してきた男が描いた。人に知られること自体が不浄である秘密−−それを知った男が描いた。ここには原始の気配、畏れ入るべき何かがある。人間業ではない。医師の心は漠然と黒魔術を思った。壁の絵は美しく、淫らだった。〕