飯田和敏氏の講義。

飯田和敏氏が2010年11月7日に阿佐ヶ谷LOFT A
「夜のゲーム大学」で行った講義のようなライブの映像。
タイトルは
"処女作 ナゼ飯田和敏は「アクアノートの休日」を作ったのか"
http://vimeo.com/91890641
偶然飛んできたリンクで観たんだけど、
個人的に物凄く濃密で面白かった。感動的でもあった。
つい速記録のようにノートを取ってしまい、
その作業自体も大変気持ちよかった。


内容はマルセル・デュシャンアンディ・ウォーホル
ジョン・ケージナム・ジュン・パイクといった
アーティストを軸に、工業社会や情報化社会において
いかに芸術概念が拡張されたかを紐解くといった、
ほとんど美術史の講義のような中身なんだけれども。
以下要約。


デュシャンが提唱した「レディメイド」の概念と
ウォーホルがキリストの絵と同じ重みで
マリリンモンローの絵を描くに至って
現代の芸術は「既にそこにあるもの」として
観客に発見されるのを待つものとして変容した。
芸術の特権性が解体され尽くした時に、
どうオリジナルなものをつくるか。
飯田氏は「アクアノートの休日」で
デュシャンたちが考えていた「アンビエント」の概念を
TVゲームの中で「反復」した。
ハイアートをエンターテイメントとして昇華した。
タイムラグはおよそ50年。このようにして概念は受け継がれる。


アクアノートの休日」は積極的に実験をやっていて、
例えばMAPを作るのにチャンス・オペレーション
(偶然を招きこむための様々な仕掛け。アートの方法論の一つ)
を採用していて、白い紙にコーヒーをこぼして
グレースケールで取り込み、256段階の高低差に引き伸ばして
立体化させるという格好いいやり方をしている。
ゲームはインタラクション=相互作用が重要であるため
画面は青一色のように情報的にプアな方が
逆説的に豊かな世界が展開される、という考え方もとても共感した。
グラフィックばりばりなゲームはやる気がしないのは
ゲームのインタラクティブな面を軽視しているからだ。
あと、デュシャンがアンチ・アートの人間でなく
ドキュメンタリストだという考えもすごく納得がいった。


ミニマルやアンビエントという概念について
何となくぼんやりしていた知識が
皮膚感覚で理解できる感じがあって元気が出た。
三木成夫『胎児の世界』早速買ってしまった。