「驚くべきリアル スペイン、ラテンアメリカの現代アート−MUSACコレクション−」@MOT。

昨日は久々東京都現代美術館に行ってきた。
地下鉄の清澄白河駅を上がってすぐの「花野菜」という
茶店に入ったら、常連ばかりのスナックみたいな空間で面食らう。
カレー頼んだら冷奴と大根の煮物、味噌汁まで付いてきた。


MOTの目当ては「驚くべきリアル」展。
カスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションから
スペインとラテンアメリカの代表的な現代美術作品を紹介した展示。


ラテンアメリカのリアリズムは全体的にグロテスクな印象。
独特の死生観が背景にあって、死を生の側に引きずり降ろして
対象化したいという欲求が大体通底しているように感じた。
個人的にはそれを格好いいことだと思うし、一種の憧れを感じる。
例えば一番格好よかったのはエンリケ・マルティという作家の
「家族」というタイトルの壁一面のドローイング。

家族をモデルに、現実がグロテスクに見える瞬間を誇張して描いている。
カトリックの伝統様式へのアイロニカルな視線が入ってるのも面白い。
日常に潜む狂気的な瞬間を切り取っている。


あと、リアリズムの背景にはドキュメンタリーの精神というか欲求があって、
現実を記録・保存したいという欲求が根本にあると認識した。
美術作家の特権性が解体された現代では
アートが「既にそこにあるもの」、発見されるのを待つものでしかないとしたら
ドキュメンタリーに行くのはとても自然のことのような気がする。
ライモン・チャベスという人はラテンアメリカを旅しながら
風景や報道をドローイングで旅日誌のように綴るという、
ちょっと羨ましいような表現をしている人。
旅の記録を生々しく表現する手段が写真とか映像でなく
ドローイングというのが面白い。


作品はドローイング以外にも映像だったり立体物だったり色々。
どれもコンセプチュアルで観るのに気合いが要る内容だったけど面白かった。
例えばサンドラ・ガマーラという人は架空の美術館を拵え、
その擬似カタログとして自分が方々の美術館で撮ってきた
作品の写真(奈良美智とか村上隆とか日本の作家を含む)をもとに
そのまま絵に起こすという、かなり倒錯した表現をしている人。
やってることは確信犯のパクリだけど、絵自体はオリジナルという。
こういう本物と偽物のボーダーを危うくする表現は
ミステリアスで格好いい。
片山薫という人は、伝統舞踊「チャロ」の踊り手たちに
テクノミュージックに合わせて無理やり踊ってもらい、
異文化の摩擦と順応を表現して見せた。
こういう表現は分かりやすいほど力強いと感じた。


あとまだ色々あったけど、1フロアで十分お腹一杯の展示だった。
常設展は空いていて快適で良かったな。
この連休、なるべく人混みを避けて活動していた気がする。
結局逃れられませんでしたが。